茶道の最初の行事である、裏千家の初釜に使われることが多い主菓子(おもがし)に、華やかな「花びら餅」があります。新しい年を代表する上生菓子です。
因みに表千家は「常磐饅頭」(ときわまんじゅう)です。
宮中のおせち料理の”菱はなびら”を元にした和菓子で、平安から形を変えながら残っている伝統菓子です。
甘く炊いた牛蒡は、もとは固い押鮎だったそうで・・これは意外なことです。
土中に根を伸ばす牛蒡は「家の基礎がしっかりする」とか「長寿」の意味があるそうですね。牛蒡の香りを好む方も多いと思いますが、私もそのひとり。
日本人が好む”香りのひとつ”かも知れないと思っています。それをお菓子に利用するなんて、誰が考えたのでしょうか?素晴らしいですね。
我家では私の趣味の延長上、新春には必ず家族でお茶を点てて喫するのが慣わしです。家族がとても好きなお菓子です。
しかしながら、買い求めるお店によってかなり見た目が違いますし、風味も違うことをご存じですか?
静岡県で茶道を極めていた頃、茶事でいただいた”やや小ぶりの花びら餅”の味が忘れらません。
その後、年末年始にその味を求めて、様々な店の味を試しましたが未だに”あの風味”に再会が出来ません。関西に来てからも、京都で買い求めたものも、期待していた味と違いまして・・私はガッカリしました。
私が探している風味は、白味噌の香りが高く、白味噌餡の円やかな甘味と塩味が味わえた一品でした。それは牛蒡の大地の香りと相まって、絶妙なバランスでした。またその”花びら餅”は、特に微かではありますが、塩味が効いていました。あ~っ、もう一度食べた~い!
残念ながら、味の記憶はしっかりしていますが、外観はどのようなものであったか定かではありません。
花びら餅の本来の形は、白く丸い餅の上に小豆の汁で色づけした菱形の薄い餅を重ね、その上に白味噌の餡と甘く炊いた長い牛蒡をのせ、半分に折り曲げて半月型にしたもの。ですから、見た目は牛蒡がサンドされた白い半月餅のようです。
最近よく目にする花びら餅は、その名の”花びら”の雰囲気や春の季節を出すために、本来なら”小豆色”の菱餅を鮮やかな桃色の着色料で染めています。見た目はとても愛らしく優雅で、正に新春の寿ぎ感を出していますね。
ですが、伝統菓子として現れてきた時はもっと落ち着いた色目で優しい”小豆色”でした。
専門的な細かな粉の調合は知りませんが、包んだとき紅色の餡が透けて優雅に見えるようにと、全体を包む丸餅も薄い上新粉へと変化したようですね。
本来の形を知っておくことは日本人としては大事だと思っているところです。
でもまぁ~、新しい年を迎えるにあたり、家族仲良く好きな”花びら餅”を食べて、満足すれば良いのですから。
今年も”あの味”には出会えませんでしたが、可憐な色目の”島根の花びら餅”を美味しくいただきました。
チンチンと釜の清々しい音を静かに聞きながら、来年こそは”小豆色の薄餅”がささやかに見える”花びら餅”をいただきたいな・・あの味にも出会いたいわ~と思う私。
案外、自分で手作りすることも・・アリかな?