毒草の誘惑 正倉院のG・エレガンス

毒草の誘惑

忘れていた薬物使用の報道が、また最近増えているような気がする。また税関で麻薬や覚醒剤が見つかって没収されたニュースもよく聞く。

古今東西、人という動物は毒草の誘惑から、知という力を天から授かったゆえに誘惑から逃げられない動物なのかも知れないと感じている。

若いころ植松黎著の「毒草の誘惑」という本に出会った。講談社出版の写真やイラストが美しい本で興味深かった。

それまで知らなかった毒草が身近にも沢山あることもこの本から学んだし、植松氏のエピソードを交えた文脈が私好みで楽しかった。

古代シュメール人も知っていたケシの効能

医療用の痛み止め薬として聞いていた「モルヒネ」がケシから出来ることは知らなかった。ケシから「アヘン」という麻薬がとれる。その重要な成分が「モルヒネ」で、この「モルヒネ」からはさらに強い「ヘロイン」が精製されるのだ。

ケシの麻薬成分は花びらが落ちた後の「ケシ坊主」から滴る汁から出来る。シュメール語の楔形文字にケシが「喜びの草」と記され、クレタ島から出土した「ケシの女神」像はケシ坊主の冠をつけて、目をつむり、両手をあげている。

アヘンのとれるケシは白い花が多い

ケシ坊主から滴る麻薬

麻はマリファナ

マリファナが麻だということもこの本から学んだ。私は実際の麻を見たことが無かったが、我が子の産着に、この麻の葉模様を選んだことは覚えていた。日本の伝統文様として親しんでいた柄ではあったが、実はその薬効が関係していたことには覚えが無かった。

衣料の麻の生地は涼しげで、古くから日本生活の中に溶け込んでいる植物でもある。

産着にも使われる麻の葉模様

ヒンズー教典にある「歓喜の草」がマリファナ

麻は雄雌異株の植物です。雌株の芽先からでる樹脂が甘やかな思いに熱中させることを最初に見つけたのはインド人だったそうだ。ヒンズー教典に神がヒマラヤから「歓喜の草」をもたらしたと書かれている。

麻の草は背が高い

 

麻の葉

正倉院に眠る地球上で最猛毒の植物

私がこの本の中で一番強烈な印象をもったのは「ゲルセミウム・エレガンス(G・エレガンス)」のエピソードだった。

地球上で最猛毒の植物で、タイの奥地にある密林までこの筆者は出かけている。

この毒は青酸カリの80倍で塵よりも軽い。姿は可憐な花だが、その根はわずかな量で人をのたうちまわらせ、死に至らしめる植物界の悪魔のような猛毒であるそうな。

G・エレガンスの花

正倉院の宝物の中にあったG・エレガンス

大量のG・エレガンスが「冶葛」(やかつ)と名前を変えて宝物の中に含まれていたことが分かった。

薬物としてその他の「麝香」「人参」等と一緒に正倉院へ献納されたときの記録では、この「冶葛」は14~19キログラムあったとされている。

それが1996年、千葉大学薬物部教授が調査した時には何と390グラムしか残っていなかった事実はミステリーですね。

いったい、誰が、いつ、何のためにこの猛毒を献上して、そして何の為に使ったのか!

封印されていたこの薬物がしばしば消えていたこと。756年(天平勝宝8年)に32斤あったものが、856年(斉衝3年)にはわずか2斤11両2分しか残っていない。100年の間に大半が消滅したことになる。

いったい、だれが何の目的のために持ち出したのか?いろいろなストーリーが想像されますね。もしかして・・暗殺か?案外、歴史の中に真実が隠されているのかもしれない・・なあ~んて。

 

久しぶりにこの本を読み返してみて、身近な毒草をあらためて認識したところですが、やっぱり美しい花や実には怪しい秘密が隠されていることは、確かなようですね

身近なフクジュソウ・コブシ・トリカブト・スズラン・イヌサフラン・ジタギリス・クリスマスローズ・キョウチクトウ・アセビ・ヨウシュヤマゴボウ・ヒガンバナ・バイケイソウ・イチイ等も毒草です。

自宅から2軒目と3軒目の間に毎年秋に鮮やかな実をつける草が気になっていました。この本のなかで紹介されていたヨウシュヤマゴボウと分かって長年のつかえが取れた感じです。この本のイラストが記憶の中にいたようです。

皆様もお気をつけあそばせ。

 

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