人生のブルーモーメント ー夜明け前ー

私が経験した「いろ」

還暦を過ぎた私は、情けないことにいつの間にか人生の折り返し点を過ぎてきてしまったことに、最近、ようやく実感しているような有様です。

がむしゃらに駆け抜けてきた感がある私ですが、僅か60年余の人生でも、その時、その時に、その時代を象徴するような「いろ」があるように思えます。

私は「人生がバラ色」なんてことは縁がなくて、「お先真っ暗」で自暴自棄になった時もありました。まさに人生は山あり谷ありで、いろいろですね。

私は今、人生の夕暮れ前かな?「黄昏の時」に向かっていることには違いないのですが、大学卒業後の3年間が私にとっての「夜明け前」だったと思えます。

 

私の修業時代「夜明け前」は

「夜明け前」が一番暗いといわれます。

苦難の期間は終わりかけが一番苦しく感じられるもので、それを乗り越えれば事態が好転するという例えに使われますね。

長く暗い時を終えた、日の出前の一瞬、空一面が蒼い光に包まれる現象「蒼い時」は、「ブルーモーメント」と呼ばれ儚く美しい時です。しみじみとした期待感が溢れるひとときです。

今思えば私にも、苦しい修業時代「夜明け前」と、愛おしい「ブルーモーメント」がありました。

「夜明け前」そして「ブルーモーメント」

和装の姿を目にすると、懸命に過ごしたあの時が蘇ります。

四十余年前、私は和裁技能を習得するために、専修学校の門戸を叩きました。三年間の寮生活と、卒業時には国家試験の関門が待っていました。

昨今は高齢化が進み和裁士の確保が困難なことや、経費削減の為に仕立てが海外に出されていることを知ると誠に残念と感じます。私の時代でも忍耐を課してまで和裁士を志す若者は少ないものでした。

だが、友と切磋琢磨して針を運んだ一日一日は、辛いことばかりでもありませんでした。

優麗な染めや文様、織りや刺繍など様々な伝統技に毎日触れ、仕立てながら目が肥やせたのです。日本の民族衣装に携わるという、気概や誇りが芽吹くと、私もいつか美しく纏いたいと乙女心も育ちました。

世間知らずの娘たちが親元を離れて過ごす寮生活は、上下間も厳しく、脱落者も多かったと記憶しています。消灯後、誰もが枕を濡らしたと思います。

共に泣き、語り、励まし、明るく笑い合った乙女たちの心は健気で清らかでした。

人生が始まったばかりのあの若い3年間を懸命に過ごした「夜明け前」。

そして実技試験を突破し、和裁技能士の資格を取得したあの時こそ、友と一緒に見ることが出来た「蒼い時・ブルーモーメント」だったと。

私の愛おしい人生の遺産です。

昨今の報道を見るにつけ、私が青春を過ごした時代より、生きにくい時代だと感じます。

しかし挫折感に押しつぶされそうなことは、どのような時代でもあるのです。人には「夜明け前」のような暗い時間が必ずあるもの。

その真っ只中にいるときは、長く辛く涙することもありますが、この世に明けない夜はない。総ては自分自身の取り組み方しだいなのです。

『誰にでも美しい「ブルーモーメント」を見ることが出来るの!粛々とガンバ!』と、これからを担う若者たちに声援を送りたい私です。

 

 

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