私が初めてGB(ゴールデンベリー)を知ったのは、20年程前のこと。実家からの帰路に、遠州名物をお土産にするために立ち寄った、静岡県掛川駅のJR売店でした。
小袋に十数個が入って、いくらだったかなぁ?300円程度でしょうか、決して高値ではありませんでした。
初めて見る赤くない“ほおずき”に興味が湧いていくつか買い求めたことが、GBへの陶酔の始まりです。
トロピカルな甘みと酸味、何より私が好んだのは熟したGBの“香りの素晴らしさ”です。食べたことのない濃厚な旨味と、鼻腔を抜けるお洒落な香りがミックスされてもーう、たまりません。一度でファンになったのです。
「あーあ、もっと買ってきたら良かったなぁー」と後悔しきりでした。
しょうがなくて、掛川駅の売店へ電話をして生産者を教えて頂き、早速に注文。5000円分を注文したら80センチサイズの段ボールにいっぱいのGBが届きました。「キャー!こんなに大量!」
いつもお世話になっている方々や、お友達にお分けしたところ、大好評!
「初めて食べたー、どこで買ったの?もっと欲しいわ。」とラブコールがありました。それからの数年間はその農家に直接依頼して、皆様にお配りするのが恒例となりました。
関西で唯一見かけたのが京都、錦通りの八百屋さん。10個で1500円にはたまげた!手が出ませんでした。
GBは美味しいだけではなく栄養もスーパー級だということを知り、ますますファンになってしまった私たち夫婦。
成分をざっと調べると、こんな感じです。
ビタミンB群
βカロテン→抗酸化で活性酸素の発生を防ぎ、皮膚や粘膜を健康で美しく
イノシトール→脂肪肝を防ぎ、コレステロールを下げる効果
鉄分→現在は鉄分が不足しがち、頭の良い子を授かるには鉄分は大切
ビタミンA→活性酸素の発生を抑えて、生活習慣病や動脈硬化を予防
ビタミンP(バイオフラボノイド)→ポリフェノールの一種で免疫力を高める
もう、これは食べなくては損!です。人工的なサプリなどよりも、美味しくて安全なGBが絶対おススメですね。
ヨーロッパではトマトなどと同様の野菜として認知度が高くて、GBは普通に八百屋で売られているとか。なんと羨ましいことでしょう!
西野家御用達のGB生産者Kさんから、「大型台風でGBのハウスが水浸しになり、ひどい状況です。それで生産を中止することにしました。毎年注文をしてくださってありがとうございました。」と連絡があり、かなりショックな私たち。
退職して丹波に戻った暁には、GBを植えてみたいねと、慰め合っていました。
その後、Kさんのような大きくて美味しいGBに遭遇したことはありません。
フレンチやイタリアンのコースでは、トッピングされたGBを食べましたが、料理の素材として購入する機会はありませんでした。
11年前、ようやく丹波へ戻ってきた私たちは、放置状態の畑を少しずつ整備してGBを育てました。
やる気マンマンの夫、博詞がGBの担当と何となく決まりました。
私は夫にお任せして傍観を決め込みました。
かいがいしく夫は動き、やがてゴマ粒ほどの小っちゃな種から、人の背丈以上の大木に成長しました。根本は太く木質化して立派なものです。
夏場の水やりをせっせと勤め、やがて黄色い可愛い花が咲いてくると、夫は嬉しさを隠せない様子。
GBはナス科で、その花はナスの花によく似ています。
傍観者の私もこの時ばかりは、長い枝を折らないように背をかがめ、苦労して避けながら、必死に数十株の水やりのお手伝いに勤しみました。
結実した緑色のガクが、茶色になり、風に揺れてかさかさと乾いた音で鳴り出した初秋。待ちに待った収穫時期の到来です。
しかしながら、その数の多さと収穫の大変さに私は直ぐに悲鳴をあげました。広くスペースをとって植栽したにもかかわらず、GBの畑はジャングルのよう。
枝の剪定を怠ったせいで、すべての枝に大量の花が付き、それが結実したため、大量の実がなりました。しかも小さいものも多くて、枝を触るとぽろぽろと落下します。
でも、収穫したGBは格別!その味と香りに私たちの苦労は慰められました。
農業は全くの素人、デスクワークのような働き方では野菜は育てられません。知識も必要ですが、農業は経験がものをいうことを、肌で感じました。
こんな素人ならではの経験を数年続けて、昨年は500円硬貨大の大きく立派なGBを収穫するまでになりました。
昨年初めて、道の駅へ初めて出荷したのですが、関西では認知度が低いため最初は売れ残ることもありました。
しかし知っている方には、その美味しさと安さが大好評!
それは、トーゼン!!ですよね。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」と、昔の人は言いました。
夫の毎年の失敗は、決して無駄が無かったのね。貴方様は立派です!