新聞で精神科医の神戸大名誉教授、中井久夫先生のご逝去を知りました。
中井先生が兵庫県こころのケアセンター初代所長のころ、先生がセンターに寄贈された資料群を整理し、パソコン入力をする仕事を私は2名でしていました。閉架書架に入りきれない蔵書や資料群は貴重な資料ばかり。その整理と入力をお手伝いできることに、とてもやりがいを感じながら仕事をしました。
昼食時、先生方と同じテーブルを囲むことがありました。そんな時はそれぞれのお人柄が滲みます。中井先生は柔和な方で、決して見下した物言いをする方ではありませんでした。紳士的でお優しい人柄に、私は瞬く間に尊敬の念を覚えました。
中井先生を思い出すとき、私は決まってあの閉架書庫の光景が浮かびます。十進分類法を網羅したような蔵書群に、まるで中井先生の頭の中の知識や思考、好みを盗み見するような気分になったものです。数ヶ月間の短い期間ではありましたが、とても刺激を受けました。
医学書に留まらず豊かな表現で、翻訳絵本や随筆も数多く執筆されたことは、あの圧倒的な蔵書群が素地にあります。
多くの「ことば」を社会に残して下さった中井久夫先生、こころから感謝申し上げます。