映画「風と共に去りぬ」が「人種に対する偏見を含んでいる」として、アメリカの動画配信サービスは配信を停止しました。
私は中学生1年の夏休みにマーガレット・ミッチェル著のこの作品に出会ってから約半世紀の間、この長編物語の大ファンです。もちろん映画化されたものも何回も観ていて、その度に感動を新たにしています。
この度のアメリカ警察官による暴行で、黒人男性が死亡した事件への抗議デモを受けて、アメリカの動画配信サービス「HBO Max」は、「作品は残念ながら、当時のアメリカ社会の風潮だった民族や人種に対する偏見が含まれている」としてこの映画の配信を停止したと発表しました。
皆様ご存じの通り、「風と共に去りぬ」は南北戦争のアメリカ南部を舞台にした、主人公スカーレットの波瀾万丈の人生を描いた映画です。公開は1939年、アカデミー賞を獲得するなど不朽の名作とされています。
アメリカでは、黒人男性が白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件をきっかけに世界中で抗議デモが広がっていて、収まる気配は全くなく世界中に拡散しています。
「全米で広がる人種差別への抗議デモをうけてエンターテインメント業界にも内容を再考する兆しが出ている」と有力紙が指摘しています。
アメリカではこのほか、警察の働きぶりを描いたリアリティ番組の放送が中止になるなど、事件をきっかけに偏見や差別の問題に神経をとがらせる動きが広がっています。
私は疑問に思います。これってどうなのでしょう?
人種差別抗議と、今までの映画作品の再考とは別問題だと思えてなりません。
私は大の映画好きで、数多くの映画を観て、感動をいっぱいいただいてきました。
その中には実話に基づく人種、差別、マイノリティーをテーマにした作品が多く、それらの非条理の悲しさが心に強く残っています。だからこそ差別などは、あってはならない事として、心に刻みますし、複雑な人の心の機微を沢山学べたと私は感謝しています。
「HBO Max」は作品の配信を再開する場合は歴史的な考察や差別的な描写への非難を合わせて掲載したうえで、オリジナルのまま伝えるとしていて「何か手を加えれば偏見の存在自体を否定してしまうことになる」とコメントしています。
作品はぜひオリジナルで発信すべきですよね。
映画好きな一ファンとして、多くの作品を観てきました。
私だけではなく、多くの方々が感動を覚えた作品にも、人種差別が色濃いものが沢山あります。
その中から、私がこれからも何度もみたいと思う映画をあげてみますね。
皆様はご覧になったことがありますか?
もしまだなら、その機会を作るべき作品ばかりです。
私も網羅して観てはませんが、思い出せる限り並べてみますね。
1 「グリーンマイル」 奇跡は必ず起きる。最も予期しない場所で・・死刑台へ続く緑の道。黒人大男と看守たちの奇跡の話。
看守役のトム・ハンクスと、謎のパワーを持つ心優しい大男のやりとりは、人種を越えた人間としての信頼のすることの素晴らしさを見せてくれます。
2 「白いカラス」 大学教授を引退した白人男性と、夫の暴力から逃げている白人女性との情感豊かな話。
実はこの話は思いがけないオチがあります。見かけは白人でも黒人の血が流れていることを、妻にも隠し続ける男性。心の葛藤や悲しさを抱き続けた白人男性を描いています。私の好きなアンソニー・ホプキンスとニコール・キッドマンのしっとりとした大人のラブストーリーです。
3 「評決のとき」 アメリカのジャン・グリシャムのベストセラーの映画化。ニューマンドラマ。
4 「ルーツ」 テレビドラマで日本でも放映された、悲しい実話。奴隷としてアメリカに連れてこられた、クンタキンテとその子孫の話。
私は若い頃、このドラマを泣きながら観た記憶があります。
5 「グリーンブック」 黒人ピアニストとイタリア系白人の運転手の話。グリーンブックとは、黒人が利用を許される、ホテルやレストランを記載した黒人用旅行ガイドの名称。
この映画で初めてグリーンブックという存在を知りました。イタリア系運転手の明るさが、この映画を観る方も助けられる感じです。
6 「ドライビング Miss ディジー」 白人の老女ディジーと、初老の黒人でベテランの運転手ホークとの友情の話。ヒューマンドラマ。
俳優もベテラン揃いで、隙の無い演技が光ります。肌の色や階級に関係なく、徐々に人対人として信頼関係を築いていく温かい話しで、ラストではしみじみとしてしまいます。
7 「エデンより彼方に」 人種差別、同性愛問題を扱った話。
この映画監督は確か女性監督だったと記憶しています。ストーリー展開も丁寧なのですが、画像が美しくて繊細な描写が多いと思いました。印象に残るのは一面の黄色い紅葉の林に立つ主人公の赤いワンピース姿が息をのむほどに美しい!どの場面も絵画のようなシーンです。
8 「それでも夜は明ける」 自由階級の黒人が友の裏切りで、奴隷として売られてしまう実在の話。
高等教育を受けていることを隠くさなければならない生活。奴隷として我慢と忍耐を何年も強いられつつも、家族の元へ帰る希望を持ち続ける姿に、私も自然と歯を食いしばりながら観てしまいました。
9 「ヘルプ」~心がつながるストーリー~ 白人女性とその家の黒人メイドとの友情の話。
黒人メイドを意地悪くこき使う白人もいれば、常識的に対応する白人もいることが分かる映画でした。どんなことにでも、その人の心の有り様がわかるものだと感じる映画でした。
10 「ドリーム」 1960年代、有人宇宙飛行計画を陰で支えたNASAの黒人女性スタッフの功績を伝える実話。
この映画はそれまでの「黒人ステレオタイプ」と言われるような、黒人はこうあるべき・・という白人目線の考えが根底に流れません。
有能で才能のある者は肌の色を超えて、活躍の場を提供しようと理解する白人の男性上司の存在と、そこまで思わせてしまう彼女たちの戦い方が素晴らしいのです。悲しい屈辱的な場面もありますが、有能な彼女たちの明るさが、観る者を引きつけます。鑑賞後が清々しく、元気が出る映画です。
このほかにも
「アラバマ物語」・「招かれざる客」・「アミスタッド」・「カラーピープル」・「ヘルプ」などなど。名作が沢山ありますよね。
沢山の作品から、あらゆる差別感情から、隠そうとしても忽然と現れてしまう人間の醜い行動を教えてもらいました。
そのような恥ずべき感情が、自分を支配することが今までなかったか?私は自分に疑問符を向けます。自己中心主義が止まらない限り、差別意識がでることになるのでしょう。
事件から一月以上立ちましたが、黒人男性が死亡した事件への抗議デモが国内外で止まりません。そのニュースを見るにつけ、自分も決して差別意識にとらわれない生き方を、心にしっかりと留め置きたいと感じています。