気がつけば公私にわたり、人生の多くの時間を本と共に過ごしてきました。
私の趣味の一つ、この蔵書票の魅力を多くの方々に知って頂けることを期待して、回数を分けてコレクションをご紹介します。
30年前に、静岡県で行なわれた蔵書票フェスタで「蔵書票(書票)」の魅力にとりつかれ、多くの愛好家や版画家と知り合うことになりました。
人生の諸先輩から温かく蔵書票の指南を受けることが出来たことが、私の仕事や生き方に大きく影響をもたらしました。その方々の素晴らしい作品のみならず、人生観や生き様に感嘆することが多くありました。
「蔵書票」といってもほとんどの方はご存知ないでしょう。「蔵書印」のことは知っていても「蔵書票」については馴染みが少ないため、展示会を開催しても「蔵書票とは・・」の説明から始めなければならないのが現状です。
これは蔵書票の持つ役割や性質上、止むを得ないことかもしれません。しかし、その歴史は古く一度「蔵書票」の世界を知り、魅了されるとすっかりその虜になってしまう人が多いことも事実です。
世界中に愛好家や作家がいて、交流をもちながら活躍しています。まさに「蔵書票」はグローバルといえます。
グローバルといえば、世界中の情報を瞬時に得ることができるインターネットはその最先端にあるといえますが、しかしそのインターネットも様々な問題を抱えています。
最近の日本では親兄弟、家族や友人という自分にとって最も深い繋がりを持つ人間関係の絆さえも危うくなり、忌まわしい出来事も起きています。
このような時代にこそ、教育のあり方が改めて問われなくてはなりません。“人”は教育されて初めて“人間”になるのです。教育とは、人と人、人と社会、異文化同士、国家同士というような異なるものを近づけ、コミュニケーションして、理解と尊敬を育むことができる“能力や技術”を身につけることだと思います。
自分中心ではなく、他のものを“大事にする心”が全ての人々の心にあったなら、私たちの青い星“地球”は永遠の平和を約束されるでしょう。
読み捨ての本が大量生産される近年は、本の価値そのものを貶めているように私には思えます。
本を大事にする心の形が蔵書票でしょう。今の時代にこそ、この心のあり方が必要なのだと感じます。
蔵書票は、世界的に「エクスリブリス」(EX LIBRIS)といわれており、その言葉はもともとラテン語ですが、この言葉は世界共通語となっています。その意味は、「誰それの蔵書から」ということです。
英語ではBOOKPIATEと呼んで親しまれていますが、EX LIBRIS(エクスリブリス)の言葉が国際的に使われ万国で通用しています。
書物の所有者を明示するために作られた美術小紙片(多くは版画)で、美しい絵や図柄と所蔵者の名を入れたこの紙片を表紙の内側の「見返し」部分に貼って所有を明らかにすることが「蔵書票」の役割です。
①蔵書票であることの表示
・EX Libris ・○○蔵 ・○○珍蔵 ・○○愛蔵 ・○○の本
②持ち主(票主)の名前(本来は本の持ち主)
・個人または団体名
③票主を示す絵柄
・その方の好きな絵
・その方の職業
・その方のモットー(好きな言葉)
・作家におまかせした図柄
・コンクールの指定テーマの絵
蔵書票は本来の役割を離れてその美しさから蒐集の対象になっていきました。
私はもっぱら季節や行事に合わせて、玄関や部屋の所々に額に入れて飾って愉しんでいます。
O氏は私と同じく「蔵書票フェスタ・静岡」で初めてこの世界を知り、警視の仕事の傍ら趣味で木版画を始められました。その腕前をアッという間に開花され、退職後は紙漉きや大型版画の作品まで手がけた方です。
O氏は私が関西に越してからも、私が企画した書票の企画展に静岡から、わざわざ来てくださるほどの熱心さでした。
創作を早々と断念してただの愛好家として蒐集の道へ入ってしまった私ですが、O氏はいつまでも応援してくださり、いただいた蔵書票や版画作品の数は数えきれません。
デザインスタイルも様々に工夫されていて、O氏の熱中ぶりがうかがえます。その柔軟なスタイルにはいつも驚かせられました。これからもご紹介します。